Novel


>LIONTARI ILION

>>誕生日の贈物 1




それは今から少し前の8月16日のこと。久しぶりに3人一緒にアテネの町まで繰り出した。今日の主役である獅子宮の宮主への誕生日プレゼントを買い出す為だ。
今年のプレゼントは主役自らの希望で、欲しいモノを自分で選んでもらうことになっている。町歩きの途中、腹ごしらえの為に立ち寄ったスタンドでギロをパクつく。
「監視付みてーでカッコ悪りぃ〜」と、口では文句を言っていたアイオリアだったが、獅子宮総出の昼食兼買い物ツアーに、まんざらでもない表情である。
何軒ものお店をハシゴし、貯めておいたお小遣いと誕生日用特別お駄賃を合わせて、なんとか気に入った服と小物を購入するのだった。



外での用事が済み、聖域まで戻る。
「今夜はアイオリア様の好きなものだけ作りますからね〜 ご一緒に買い出ししませんか?」張り切って腕まくりまで始めたエアの問いに
「いや、荷物もあるし、ここで待ってるわオレ。」と、疲れた訳でもないのに広場の中心にある噴水の脇に腰掛ける。

「??そうですか…。」
「では我々が戻るまで、ここで待っていて下さい。なるべく早く済ませますので。」
「そんなに慌てないでいいよ。沢山作って欲しいからサ。」
こうして獅子宮の従者二人は、人ごみでごった返す市場へと入っていった。


一人残された獅子。すると、同じように近くに座っていた老人に一言二言話しかけると、荷物を置いてどこかへ駆けて行く。数分で戻って来たアイオリアの手には、紙袋が握られていた。彼は老人にお礼を言って、ずっとそこにいたかのように元の位置に腰を下ろすのだった。



「随分とかかっちゃいましたね〜。アイオリア様、へそを曲げてなければいいけど。」
「はは、そこまで短気じゃないよ。この材料をみれば機嫌だって直るさ。」
「ガランさん…それって“食べ物で釣れる”ってことでは?」
さりげに漫才をやりつつも、早足で噴水広場へ向かう買い出し組。

狭い路地を抜けたところで、アイオリアの姿が目に入る。手を振って合図をしようとしたエアの動きが止まった。
「どうしたんだい?エア。」急に立ち止まった連れを振り返り、ガランが尋ねる。
「あれ見て下さい。」そう言って何やら真剣になってるアイオリアを指差した。野良猫…だろうか?一匹の子猫と必死にじゃれている獅子座の黄金聖闘士…。

と、こちらの気配に気がついたようだ。小宇宙を察知することなんて、無意識に出来てしまうだろうに、そんなに真剣に遊んでいたのだろうか?

「なーにそんなトコで突っ立ってんだよ!」
照れ隠しに一生懸命怒っている。

従者たちは、顔を見合わせて吹き出すと、主人の機嫌を直すために、再び早足で駆け寄って行った。

「エアはこっちの軽い方を持て。」
「え?大丈夫ですよ、これくらい。」
「じゃあ、十二宮の階段でオレ達のスピードに付いて来れなかったら置いてくからな。」
「え”〜!?」
「アイオリア様、素直に『重たい荷物は自分が持つ』とおっしゃって下さい。」
ガランの戒めに「ぷう」と音がするくらい、頬を膨らませてムクれながらも、テキパキと荷物を仕分け、比較的軽い物をエアに渡す。

「プレゼントくらい私が持ちますよ?」
食材の山の上に、アテネ市内での買い物袋まで載せたアイオリアにエアが声をかける。

「いーよ。さっさとついて来いよ!」
そう言って、すたすたと十二宮へ向かって歩き出した。
「アイオリア様は、あれくらい平気だから気にしないでいいんだよ。さあ、我々も行くとしよう。」

主人の態度をいぶかしく思い、黙りこくってしまった彼女に声をかけて、ガランも歩き出した。エアも慌てて二人の後を追う。獅子宮までの道のりはまだまだ遠い。


作成日:050816

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