Novel


>LIONTARI ILION

>>ALUTHIDA 3




ノックの音。主人の安否を尋ねるアルトの声。
ガランさんが来てくれたー!!
テラスに姿を現わした彼の背後には、後光が射して見えた。(感涙)



「少しは落ち着いたかいエア?」
「あっ!はいはいはい!」

獅子宮筆頭従者の一連の動きを「ぼー」と眺めていたエアの瞳には、まだ星がキラキラ散っていた。と言うのも、彼の手並みが余りに見事だったから。
何度も試みたのに外れなかった腕すらも「アイオリア様はここが弱いんだよ。」と言って主人の脇腹の上をくすぐると、魔法のように簡単に解けたのだった。それでも獅子は眠りこけていたが…。

「アイオリア様は大丈夫だから、我々も居住区へ戻ろう。君の怪我の手当てをしないと。」

そう言われて、先ほどの痛みが蘇って来た。あれだけ勢いよく倒れたのに、主人の方は怪我ひとつしていないそうだ。安堵するとともに、少々納得いかないものを感じる。

「敵が侵入して来たら、簡単に寝首かかれますよぉ〜」と、無防備に爆睡中のアイオリアのおでこを“お返し!”とばかりに人さし指で突っ突く。

「ダメだ…反応すらしないや;」

側で見ていたガランは可笑しそうに静かに微笑んでいた。



「さあ、これで良し。」
エアの怪我は、肘・膝に痣を作った程度で済んだ。

「幸い…下が大理石だったので打ち身だけで済んで良かった。」

「お騒がせしてご免なさい。そして助けに来てくれて、傷の手当てまでしてくれて有難う」。エアは2人分のお茶をいれ直し、ガランと向かい合って真夜中のティータイム。

「ともあれ、自分のせいで君が怪我をしたことを知ったら、アイオリア様は相当落ち込むだろう。辛気くさい獅子宮になるのも嫌だから、悪いけど協力してもらえないかな、エア?」





翌朝。いつものように朝のトレーニングを終え、台所に顔を出すアイオリア。
「お早う、エア! …って、どうしたんだよ、その怪我?」
どうやら記憶がすっ飛んでいるらしい。

「あっ、すぐ治ります。大丈夫です。た、倒れただけですから!」
主人の急な問いかけに、しどろもどろで説明しようとするエア。そこへガラン「ずいっ」と登場。

「お早うございます。アイオリア様」
「あ、お早うガラン。なあ、エアの…」
「アイオリア様、女性を抱き枕の代わりにするのは感心出来ませんね。」
「なっ、何言って………あっー!?///
(昨日のオレ、エアとテラスに居たんだよな?でも朝起きた時は自分のベッドの中で。そしてエアはなぜか怪我をしていて。で、“倒れた”って何でだよ?)」

「(ダメだ記憶がねえー!一体、何やっちまったんだ…!?)」
頭を抱え、恥ずかしさと恐れから、赤と青の中間の顔色で唸っているアイオリア。

「今後は、こちらでお茶を召し上がって頂きますよ。自室でお飲みになりたい場合は、私がお持ち致しましょう。」
「(何だとぉ〜! せっかく二人だけの時間を確保したっていうのによぉ…)」

どうやら弱味を握られたことは分かったので、反論したくても反論出来ず。先程の顔色に悔しさまで加わって、更に一層複雑な表情で歯ぎしりしている様は“黄金の獅子”というより、背中の毛を逆立ててフーフー言っている子猫のようだった。

「そうそう、お茶の時間には、エアに勉強をみてもらうことにしましょうか。」
「「!?」」

ガランはエアの方を振り返って左目を瞑る。ハラハラして主従のやり取りを見ていたエアは、それを聞いてガランに微笑み返した。
『アイオリア様を落ち込ませない方法って、これだったんですね。』


「それでは夕食の後、都合の良い時間に来て下さいね。トレーニングの前でも後でも結構ですから。それ迄に資料を用意しておきます。」

笑顔でアイオリアにそう伝えたエアは、嬉しそうに朝の仕事を再開した。ガランも何時の間にやら自分の仕事に戻って行ったらしい。

その場に独りポツンと残された子猫 獅子の口から愚痴がこぼれる。

「オレの了解無しに話が進んでねえ?
…で、昨日は何があったんだよぉ!」



彼の記憶が繋がったのは、その夜の勉強会でのこと…。


作成日:050807
「勝手にG獅子祭り」小説にしては、情けない獅子でゴメンよアイちゃん。



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